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1.ジャワしょうがとは

①”ジャワしょうが” バングレと呼ばれる東南アジアの在来種

東南アジアに自生するジャワしょうが

ジャワしょうがは、しょうが科(Zingiberaceae)に属しており、インドネシアを始め東南アジアに広く分布して自生・栽培されています。世界中でスパイスとして利用される植物について1400以上にもおよぶ様々な植物の学名や一般名などが網羅的にまとめられている書籍「World Spice Plants」には、ジャワしょうがはジャワ島および熱帯アジアで栽培されていると書かれています※1。

ジャムウとしても利用されてきたジャワしょうが


ジャワしょうがは、古来よりスパイスやインドネシアの伝統薬であるジャムウ(Jamu)として利用されてきました。ジャムウにはしょうが科の植物がよく使われています。例えば世界遺産であり世界でも最も大きい部類になる仏教寺院ボルブドゥール遺跡のそばに位置し、今でもジャムウが盛んな古都ジョグジャカルタ(Yogyakarta)でジャムウドリンクを提供するショップ「Merapi Farma Herbal」ではすべてのメニューにしょうが科の素材が使われており、また隣接する農園でしょうが科の植物も含めて200種を超える植物が栽培されています※2。ボルブドゥール遺跡の壁画には、ジャムウに使用していると思われる植物や道具が鮮明に描かれており、ジャムウが古来より現地で親しまれてきた歴史を強く感じることができます。

ボルブドゥール遺跡の壁画
ボルブドゥール遺跡の壁画

ボルブドゥール遺跡(上)およびその壁画(下)

ジャムウは近年その文化的価値および有用性が再発見されつつあります。若者が訪れるようなオシャレなカフェでジャムウを提供する店もあります。ジャカルタ市内にもあるジャムウ・カフェ「SUWE ORA JAMU」もその一つです。オーナーが執筆した書籍「ジャムウの物語 インドネシアに伝わる美と健康の遺産」には、ジャムウの作り方やレシピごとの効果効能が書かれており、ジャムウの最古の証跡はボルブドゥール遺跡に描かれた女性の健康と美のために葉をすりつぶしている様子と書かれています※3。

インドネシアの首都であるジャカルタ市北部には、Kota Tua Jakartaと呼ばれる旧市街地があります。まだジャカルタがバタビア(Batavia)と呼ばれていた頃の面影がヨーロッパ調の建物から感じられる地です。中心部にはファタヒラー広場(Taman Fatahillah)があり、広場に面して趣のあるカフェ・バタビアやジャカルタ歴史博物館(Jakarta history Museum)があります。その歴史博物館の中では、ジャムウを作る時に植物をすりつぶしていた道具ルンパン(Lumpang)も展示されていました。ルンパンとは日本でいう「すり鉢」になります。

ファタヒラー広場 カフェ バタビア
ルンパン(Lumpang)

ファタヒラー広場のカフェ・バタビア(上) ジャカルタ歴史博物館のルンパンとジャカルタの近代遷移(下)

インドネシアの本にはジャムウとしての利用方法なども書かれており、ジャワしょうが20gにコリアンダーなどを加えてすりつぶし、水を加えて飲むという利用方法と一緒に、風邪、腹痛、リウマチや肥満などに効果があると書かれています※4。

ジャワしょうがの生態・特徴


また現地インドネシアでは、ジャワしょうがは「バングレ(Bangle)」と呼ばれています。スパイスやジャムウなどの利用の他には、お茶に加えてハーブティのようにして飲むこともあるようです。さらには東南アジア各地でも利用されており、タイではphlaiと呼ばれています※5。マッサージオイルなどにも使われており、抗炎症効果があるとされています※6。

バングレ(ジャワしょうが)入緑茶 ②ジャワしょうが=バングレ(Bangle)

ジャワしょうが(バングレ)入りの緑茶

ジャワしょうがの基本的な生態は一般的なしょうがと同じで、地中に埋まっている根茎(rhizome)がスパイスなどに利用されています。栽培する際にはまず種しょうがを植え、数週間で地上部には芽が伸びていき、数ヵ月で2mほどの高さまで生長します。地上で見られる葉を見るだけではその違いはわかりませんが、地中で生長する根茎を比べるとジャワしょうがと一般的なしょうがの違いが明らかになります。

試験栽培中のジャワしょうが 1.ジャワしょうがとは

試験栽培しているジャワしょうが

ジャワしょうがは一般的なしょうがと比べると、一目で間違えようがないくらい濃い黄色をしており、独特かつスパイシーで強烈な香りが特徴的なしょうがです。しょうがといえば代表的な成分はジンゲロールとショウガオールが頭に浮かんでくると思いますが、実はこのジャワしょうがにはジンゲロールもショウガオールも含まれていません

当社で一般的なしょうが(Zingiber officinale)とジャワしょうが(Zingiber purpureum)の成分の違いを分析したところ、Zingiber officinaleには一般的なしょうがに含まれている代表的な成分であるジンゲロール(Gingerol)、ショウガオール(Shogaol)のピークがありましたが、ジャワしょうがではその2成分のピークは存在しませんでした。

ジャワしょうが成分のクロマトグラム 1.ジャワしょうがとは

その代わり、クルクミン(Curcumin)やフェニルブテノイド(phenylbutenoid)などを含んでいます。ジャワしょうがのエキスに含まれる成分を整理すると、フェニルブテノイドから構成されたクラスターとクルクミノイド(Curcuminoid)から構成されたクラスターの成分が得られました。その一方で、一般的なしょうがのエキスからは、ジンゲロールから構成されたクラスターとショウガオールから構成されたクラスターが得られたのみでクルクミンやフェニルブテノイドは見つかりませんでした。つまり、含まれている成分に違いがあるということです※7。

クルクミンといえばウコンがパッと頭に浮かぶと思います。実はしょうがとウコンは、種としても非常に近い分類となっています。しょうが科(Zingiberaceae)の中にはしょうが属(Zingiber)やウコン属(Curcuma)などがあり、さらにその下の分類(種に相当)で一般的なしょうが(Zingiber officinale)やジャワしょうが(Zingiber purpureum)、ウコン(Curcuma longa)などが分類されています。しょうがとウコンは同じ科の下に分類された近縁種といえます。

ジャワしょうが分類図 1.ジャワしょうがとは

しょうが科の分類

我々がインドネシアで調査した結果、ジャワしょうがの学名はZingiber purpureumと判明しました。その後、さらに調査を進めたところ、ジャワしょうがに対しては複数の学名がついており、主なものだけでもZingiber cassumunarZingiber montanumなどの学名があることがわかりました※1。

また、ジャワしょうがを生育しているインドネシア・ジャワ島にて、しょうが、ジャワしょうが、ウコンを並べて写真を撮りました。ウコンの方が少しすっきりした形ではありますが、その外観も非常に似ているので種が近いというのも比べるとよくわかります。

ジャワしょうがの比較画像 1.ジャワしょうがとは

※1 World Spice Plants (2005) Springer
※2 アロマトピア No.140 (2017)
※3 ジャムウの物語 インドネシアに伝わる美と健康の遺産 フレグランスジャーナル社
※4 Tumbuhan Obat Dan Khasiatnya (2009)
※5 Penebar SwadayaChem. Pharm. Bull. 57, (11) 1267—1272 (2009)
※6 Phytomedicine 3, (4) 319—322 (1996)
※7 Journal of Agricultural and Food Chemistry 68, 30, 7904–7915 (2020)

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作成日:2021年8月8日
更新日:2024年3月11日