①肥満と内臓脂肪との関係
日本肥満学会のWEBサイト※1には、肥満と肥満症の違いが以下の様に明確に記載されています。また日本ではBMI(Body Mass Index)が25以上で肥満と定義されていますが、BMIが25未満の区分上は普通の体型でも、腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上(つまり内臓脂肪型肥満)だとメタボリックシンドロームのリスクが高まります。
「肥満」は「太っている状態」を指す言葉で、病気を意味するものではありません。しかし、「肥満」に伴って健康を脅かす合併症が有る場合、または合併症になるリスクが高い場合、それは単なる「肥満」ではなく「肥満症」と診断され、医学的な減量治療の対象となります。
一方、健康診断などで指摘される「メタボリックシンドローム」は別名「内臓脂肪症候群」といわれ、「肥満」である、ないに関わらず、内臓脂肪の蓄積および血圧、血糖値、血清脂質値のうち2つ以上が基準値から外れている場合に診断されます。
また肥満は、内臓脂肪型肥満(visceral fat obesity)と皮下脂肪型肥満(subcutaneous fat obesity)の2種類に分類されます。内臓脂肪型肥満はお腹の内側(腹腔)にある腸の回りに脂肪が蓄積した状態でいわゆるお腹が出ている(腹囲が大きい)状態になっており、その体型から「リンゴ型肥満」とも言われていて、男性に多いのが特徴です※2。一方、お尻や下半身の皮下脂肪が多くなるため「洋なし型肥満」とも言われる皮下脂肪型肥満は女性に多く、内臓脂肪型肥満に比べると高血圧・高血糖・脂質異常の症状は少ないとされています※3。
8.炎症とグネチンCでも記載していますが、肥満は慢性炎症(Chronic inflammation)を誘発してインスリン抵抗性が進行し糖や脂肪の代謝異常を起こし、中性脂肪やLDLコレステロールが基準を超える脂質異常、高血糖、高血圧など(=メタボリックシンドローム)へとつながって悪循環のスパイラルへと陥っていくトリガーとなっています。
この時、内臓脂肪がどれだけ蓄積しているかが非常に重要であり、内臓脂肪面積が100cm2以上(目安が男性で腹囲85cm以上、女性で同90cm以上)の内臓脂肪型肥満になると、以下の11種の健康障害を発生するリスクが高くなると「肥満症診療ガイドライン2016」には記載されています※4。
・耐糖能異常、2型糖尿病
・脂質異常症
・高血圧
・冠動脈疾患、心筋梗塞、狭心症
・脳梗塞、一過性脳虚血
・肥満関連腎症
・月経異常
・骨、関節疾患
・睡眠時無呼吸症候群
・非アルコール性肝疾患
・高尿酸血症
また、BMIが標準値内であっても、筋肉が少なくて脂肪が多いというバランスが崩れている場合があります。この場合、体脂肪率という指標も気にすべき数値となりますが、測定器ごとのブレもあるようで正確な測定は困難とされています。そのため、あくまで参考値として捉えるのが良さそうです※5。
※1 日本肥満学会
※2 厚生労働省 e-ヘルスネット 内臓脂肪型肥満
※3 厚生労働省 e-ヘルスネット 皮下脂肪型肥満
※4 日本内科学会雑誌 107, (2), 262-268 (2018)
※5 厚生労働省 e-ヘルスネット 肥満と健康
作成日:2022年12月19日