9.炎症とバングレン ③バングレンによる歯周病菌の抑制効果 ジャワしょうがに含まれる機能性成分バングレン(Banglene)は、歯周病菌として有名なジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)を特異的に抑制します。詳しくは10.グネチンCと歯周病においてご紹介していますが、歯周病は糖尿病、動脈硬化、早産、誤嚥性肺炎、関節リウマチ、慢性腎臓症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびアルツハイマー病など多くの疾病との関連が指摘されています。その原因の一つの可能性として、歯周炎の部位から歯周病菌が血中を通して体内の至る組織に侵入し、炎症を誘発するためと考えられています※1。そのため、バングレンがジンジバリス菌を抑制することで、全身の炎症を抑制する予防効果を発揮することが予測されます。 ジャワしょうが由来成分バングレンを用いたin vitro試験において、t-バングレンおよびc-バングレンはともに最小発育阻止濃度(MIC:Minimum Inhibitory Concentration)は4μg/mLと他の植物由来天然成分に比べても極わずかな濃度でジンジバリス菌の発育を阻止しました。例えば緑茶エキスや緑茶に含まれるカテキンの1種エピガロカテキンガレード(EGCG)のジンジバリス菌に対するMICは125~1,000μg/mLであり、バングレンと比べて30~250倍の高濃度でないと育成阻止ができません※2。 また歯周病菌はバイオフィルムを形成することで除去することが難しくなりますが、発育を邪魔しない濃度である2μg/mLでもバングレンはバイオフィルムの形成を有意に抑制しました。なおバングレンは他の口腔常在菌に対しては抑制効果を示さなかったため※2、口腔環境を乱すことなく特定の歯周病菌のみを抑制することで口腔環境を改善する可能性があります。過剰な抗菌効果は細菌叢の崩壊につながりかねないため、病原菌のみを特異的に抑制する意義は非常に大きいです。 ※1 特定非営利活動団体 日本歯周病学会 ※2 Int. J. Mol. Sci. 26, (5) 1787 (2025) << 前へ 作成日:2025年6月30日