②ジャワしょうがの抗炎症効果

脂肪細胞や筋肉(腓腹筋)における炎症抑制
8.筋肉とバングレンの中でも記載していますが、食生活が乱れ高脂肪食の摂取が続き肥満になると、慢性炎症を通じて生活習慣病を誘発します。つまり、肥満⇒慢性炎症⇒インシュリン抵抗性悪化⇒糖・脂肪代謝異常⇒メタボという一連の流れに暴飲暴食がトリガーとなってしまう可能性があります。さらに肥満体型の脂肪組織では免疫細胞であるマクロファージの浸潤(macrophage infiltration)が増加し、脂肪細胞(adipocyte)から分泌される生理活性物質(サイトカイン)であるアディポサイトカイン(adipocytokine)の分泌破綻が促進されていきます。それによって炎症性サイトカインが増加することで引き起こされる慢性炎症を制御することが、ジャワしょうがを摂取させた動物試験で明らかになっています。
ジャワしょうがには、高脂肪食を摂取した時の脂肪細胞においてマクロファージの浸潤を抑制する効果があります。学習・記憶障害促進マウスであるSAMP8を普通食群(Con群)、高脂肪食群(0%Ba群)、高脂肪食+1%ジャワしょうがエキス粉末群(1%Ba群)、高脂肪食+2%ジャワしょうがエキス粉末群(2%Ba群)のグループに分け、精巣脂肪組織におけるマクロファージ浸潤数を計測したところ、1%Ba群に比べて2%Ba群は有意に減少しました※1。

c:0%Baに対してP<0.05
また別の試験では、ラットを普通食群(Con群)、高脂肪食群(HFD群)、高脂肪食+1.5%ジャワしょうがエキス粉末群(Ba群)、高脂肪食+1.5%ジャワしょうがエキス粉末+運動群(Ba+Ex群)、高脂肪食+運動群(Ex群)の5群に分けて、腓腹筋(gastrocnemius muscle)における炎症とインスリン抵抗性を促進する酵素のアイソザイムであるCOX-2を測定したところ、HFD群に対してBa群は減少傾向を示し、Ba+Ex群とEx群は有意に低下しました※2。
大腸における炎症抑制、加齢制御因子の改善効果
さらにジャワしょうがは、腸の炎症である潰瘍性大腸炎(UC:Ulcerative colitis)においても炎症を抑制しました。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって大腸炎を誘発させたマウスを、DSS未摂取のコントロール群、DSS摂取群(0%BaE群)、DSS+ジャワしょうがエキス粉末(サラファクト®)1%含有食群(1%BaE群)、DSS+ジャワしょうがエキス粉末(サラファクト®)3%含有食群(3%BaE群)、の4群に分け、大腸の長さや大腸組織のダメージ、保護機能を持つ粘液層であるムチン層の厚み、各種炎症マーカーに加えて、AMPKやmTOR、オートファジー活性についても調べました※3。
その結果、DSS摂取によりコントロール群に比べて0%BaE群の大腸は有意に短くなりますが、3%BaE群は0%BaE群に対して有意に改善しました。同様に大腸組織のダメージおよびムチン層の面積もDSS摂取で悪化しますが、3%BaE群では有意に改善しました。


a:Conに対してP<0.05 b:0%BaEに対してP<0.05 c:1%BaEに対してP<0.05
データ提供:青森県立保健大学 佐藤教授
同様に炎症性マーカーである大腸組織のマクロファージ浸潤、潰瘍性大腸炎の粘膜炎症のマーカーである血中LRG、NFκB p65タンパクおよびTNF-αのmRNAもDSS摂取で悪化しますが、3%BaE群では有意に改善しました。

a:Conに対してP<0.05 b:0%BaEに対してP<0.05
データ提供:青森県立保健大学 佐藤教授
さらに、①老化および加齢と炎症の関連性でもご紹介した加齢制御の1つであるInsulin/IGF-1経路に関与するAKTやmTORにおいてもDSS摂取で悪化しますが、3%BaE群はそれらを有意に抑制しAMPKも活性化させました。オートファジーのマーカーであるLC3B-Ⅱの増加およびp62の減少が確認されたことより、オートファジー活性が増加していることもAKTおよびmTORの変化を裏付ける結果となっています※3。


データ提供:青森県立保健大学 佐藤教授
代謝や抗老化において期待されているAMPKですが、8.炎症とグネチンC ④炎症性腸疾患の抑制効果にも記載しているとおり、その活性化の影響としては、細胞内へのグルコースの取り込み促進、脂肪酸酸化促進、糖新生の抑制などの他に腸内のバリア機能の促進や腸管吸収の促進、腸の炎症抑制効果などがあります※4。またAMPKの活性化は、長寿遺伝子として知られるSIRT 1を活性化し、mTORを抑制します。これらによって慢性炎症を抑制することで抗老化という効果も期待されます。
なお腸管のバリアー機能を有する粘液層ムチンについては、8.炎症とグネチンC ④炎症性腸疾患の抑制効果に詳しく記載していますので、そちらも合わせてご覧ください。
※1 Journal of Food and Nutrition Research 9, 8, 434-441 (2021)
※2 Journal of Functional Foods 47, 554-561 (2018)
※3 Molecular Nutrition & Food Research 0: e70034 (2025)
※4 Open Biology 7, (8) 170104 (2017)
作成日:2025年6月30日