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肝臓でコレステロールから合成されるのが一次胆汁酸であり、さらに腸内細菌によって代謝を受けたもの(すなわち、腸内細菌に取り込まれ、形を変えて腸内細菌から排出されるもの)が二次胆汁酸になります。ヒトにおいては、一次胆汁酸にはコール酸(CA)、とケノデオキシコール酸(CDCA)の2種類があります。
二次胆汁酸であるデオキシコール酸(DCA)、リトコール酸(LCA)はそれぞれ、CAおよびCDCAが腸内細菌によって変換されたものになります。DCAは腸肝循環(腸と肝臓の間を成分が行きかうこと)を通して肝臓の肝星細胞の炎症や癌化を促進する原因と言われており※1、LCAは発がん性物資存在下では結腸細胞のアポトーシス能を欠落させることで癌化を促進します※2。これらの二次胆汁酸の増加が大腸の粘膜部の炎症によって発症する潰瘍性大腸炎や肝臓癌、大腸癌といった腫瘍に影響すると考えられています。
余談ですが、食品会社で菌検査をする方なら馴染みがあると思いますが、大腸菌群の検査に使う培地はデソキシコレート培地ですが、この培地にはDCAそのものが使われています※3。そう考えると、二次胆汁酸のDCAも案外身近な成分だと感じると思います。またその一方で異なる側面もあります。「①胆汁酸とは」でも記載した情報伝達物質としての胆汁酸、その中でも褐色脂肪細胞の活性化につながるTGR5/M-BARとの結合の強さですが、これは一次胆汁酸のCDCAよりも、二次胆汁酸のDCAやLCAの方がより強いとされています。
高脂肪食を摂取すると、腸内で二次胆汁酸の量が増加します※1。しかし、メリンジョエキスを摂取すると、この二次胆汁酸が激減します。これは、二次胆汁酸を作りだす腸内細菌の構成が、メリンジョエキスに含まれるグネチンCによって影響を受けたためと考えられます。普通食群のマウスの糞ではデオキシコール酸(DCA)とリトコール酸(LCA)はそれぞれ1.54μM、0.23μMであったのに対して、高脂肪食群はそれぞれ25.45μM、5.06μMと大幅に増加しましたが、試験食群(高脂肪食+メリンジョエキス0.5%群)ではそれぞれ1.16μM、0μMと普通食群よりむしろ少なくなりました※4。
出典元:特許 国際公開番号WO/2020/071541 A1
メリンジョの他にも、フルーツ類・海藻類・キノコ類・穀物類などといった食物繊維が多い食材やプレバイオティクスとして親しまれているオリゴ糖などが胆汁酸に影響を与えます。例えば大麦には水溶性食物繊維βグルカンが含まれており、そのβグルカンが胆汁酸の排出を促すことで、肝臓での胆汁酸産生が促進するとされています※5。グネチンCは胆汁酸の産生総量を増加させ、かつ悪玉菌と考えられる二次胆汁酸産生菌を減らすことで、二次胆汁酸の産生自体を減らす作用があります。
※1 Nature 499, 97-101 (2013)
※2 Carcinogenesis 21, (5) 999-1005 (2000)
※3 化学と生物Vol.52, No.5 (2014) 胆汁酸分子種の多様性
※4 特許 国際公開番号WO/2020/071541 A1
※5 Mol. Nutr. Food Res. 54, 1004-1013 (2010)
作成日:2021年8月8日
更新日:2024年4月9日
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