⑥ジャワしょうがのオートファジー活性化効果
肥満によりAkt/mTOR経路が慢性的に活性化される結果、血管の老化および機能不全が増加します※1。また肥満状態の骨格筋におけるmTORの活性化は、骨格筋への糖の取り込みを抑制し、インスリンシグナルの伝達障害を招きインスリン抵抗性を高めてしまいます※2。
mTORとは、イースター島で発見された微生物が作り出す抗生物質ラパマイシン(rapamycin)が発見の由来となっています。ラパマイシンは細胞増殖を抑制する効果があり、土壌中で他の微生物の増殖を抑制することで生存競争に打ち勝っていることから発見されました※3。このラパマイシンが結合するのがTOR(target of rapamycin)であり、哺乳類(mammalian)という意味でmが付けられましたが、近年はその多様な機能によってmechanisticと呼ばれることもあります※1
またmTORの活性化はオートファジーを抑制します。その一方で、運動により足底筋のオートファジーは活性化されます※4。オートファジーとは、老化などにより発生する不必要な細胞やタンパク質のみならず病原菌をも取り込んで分解し、新たなタンパク質をつくるための素となるアミノ酸を供給することで体内の恒常性(ホメオスタシス)を維持するシステムです。肥満などによるオートファジーの低下は、インスリン抵抗性の悪化や代謝障害につながります。オートファジーとは大隅良典先生が発見しノーベル賞を受賞した近年注目されている機構になります。
ジャワしょうがは高脂肪食摂取時で運動を併用した際に、骨格筋の一つである腓腹筋(gastrocnemius muscle)においてmTORの活性化を抑制しオートファジーを活性化させる効果があります。ラットを普通食群(Cont群)、高脂肪食群(HFD群)、高脂肪食+1.5%ジャワしょうがエキス粉末群(Ba群)、高脂肪食+1.5%ジャワしょうがエキス粉末+運動群(Ba+Ex群)、高脂肪食+運動群(Ex群)の5群に分けて、腓腹筋のAkt、mTORおよびオートファジーのマーカーとなるタンパク質量を測定したところ、HFD群に対してBa+Ex群はmTORの活性化が有意に低下しました。また高脂肪食により低下したオートファジー関連マーカーであるLC3B-ⅠおよびⅡ、Beclin-1は、HFD群に対してBa+Ex群では有意に増加していました※5。
a:Contに対してP<0.05 b:HFDに対してP<0.05
高脂肪食を与えたラットに運動をさせたところ、体重やインスリン抵抗は改善したがオートファジーの改善は見られなかったという報告もありますが※6、ジャワしょうがには肥満によるオートファジー障害を改善し、運動効果を底上げする効果が期待されます。
※1 Science Signaling 17, 2, (62) (2009)
※2 Cell 149, (2) 274-293 (2012)
※3 酵母 生命研究のスーパースター ITSC
※4 FASEB Journal 27, (10) 4184-4193 (2013)
※5 Journal of Functional Foods 47, 554-561 (2018)
※6 Journal of Exercise Nutrition & Biochemistry 21, (3) 26-34 (2017)
作成日:2021年9月8日