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ヘルスケア

機能性天然食品素材

9.炎症とバングレン

①老化および加齢と炎症の関連性

老化の特徴(特に炎症に関して)

老化の原因のひとつ「慢性炎症」


炎症とはどういったものかについては、8.炎症とグネチンC ①炎症とはにてご案内していますので割愛しますが、ここ20年ほどで慢性炎症が様々な形で生活習慣病のみにとどまらず老化にも関連していることが明らかになっています。老化細胞(senescent cell)が炎症性サイトカイン、ケモカイン、細胞外マトリクス分解酵素などを分泌し、慢性炎症や発がんを促します。この現象を老化関連分泌表現型(SASP:senescence-associated secretory phenotype)と言います※1。ここでは慢性炎症の予防がいかに大切かを理解するために老化研究に関する歴史を少しだけご紹介します。

最初に細胞老化(cellular senescence)という概念を産み出したのはHayflickら(1961年)と言われています。細胞はある一定の回数分裂するとヘイフリック限界に達し、それ以上は分裂しない状態、つまり増殖を停止した状態となります※2。これが細胞老化と呼ばれる現象です。そして細胞老化を起こした細胞こそが、老化細胞となります。増殖しつづけるがん細胞とは異なり老化細胞は増殖はしませんが加齢に伴い蓄積していき、SASPを介して周辺の細胞にも影響を及ぼしていくようになります。

細胞老化

この老化細胞の除去(Senolysis)を選択的に行う老化細胞除去薬(Senolytic薬)、老化細胞から出されるSASPを低下させる老化細胞阻害薬(Senomorphic薬)、または同様の効果をもった天然由来成分の研究が近年は精力的に進められています。なおこの老化細胞は、増えもしないが死ぬこともないことから著名な科学誌Natureにおいて「ゾンビ細胞」とも表現されています※3。

老化に関わる12の特徴


また、Natureと並んで3大科学雑誌のひとつである科学誌Cellにおいて、2013年に老化の特徴(Hallmarks of aging)という論文が老化について論じています。老化は、がん、糖尿病、心血管疾患、神経変性疾患などの危険因子であり、大きく分けて9つの特徴が列挙されています※4。その後2023年に同雑誌にてアップデートされ、マクロオートファジー障害(Disabled macroautophagy)、腸内細菌叢の崩壊(Dysbiosis)の2因子と同時に慢性炎症(Chronic inflammation)が追加され、下記に列挙した3カテゴリー計12因子が老化の特徴と記載されました※5。これらの現象が相互に影響を及ぼすことで、疾病症状や老化を加速させていきます。追加された3つの特徴は、ここ10年の研究から新たに老化に関連することが明らかになったものや単独で扱うべきテーマと認識されたものであり、慢性炎症がいかに老化につながる重要な因子であるかがよくわかる例となります。

  • Primary
    Genomic instability(ゲノム不安定性)
    Telomere attrition(テロメア消耗)
    Epigenetic alterations(エピジェネティックの変化)
    Loss of proteostasis(プロテオスタシス★欠如) ★たんぱく質の合成・分解などの制御・恒常性の維持
    Disabled macroautophagy(マクロオートファジー障害)
  • Antagonistic
    Deregulated nutrient-sensing(栄養感知の制御不能)
    Mitochondrial dysfunction(ミトコンドリアの機能不全)
    Cellular senescence(細胞老化)
  • Integrative
    Stem cell exhaustion(幹細胞の枯渇)
    Altered intercellular communication(細胞間コミュニケーションの変化)
    Chronic inflammation(慢性炎症)
    Dysbiosis(腸内細菌叢の崩壊)
腸内フローラ 6.腸内細菌とグネチンC

加齢制御につながる3つの経路


このように炎症のコントロールは老化にも影響を及ぼします。老化に対する有効な手段としては摂取カロリーを30%カットするカロリー制限(CR:calorie restriction)が有名ですが、加齢を制御する経路は大きく以下の3つに集約されます※6。

  1. インスリン/インスリン様成長因子-1(Insulin/IGF-1)経路
  2. SIRT1経路
  3. mTOR経路

Insulin/IGF-1経路は高栄養状態で活性化し、PI3K⇒AKTの活性を引き起こして細胞周期抑制因子であるp21およびp27を抑制することで細胞のG1期からS期への移行を促します。またAKTの活性化は、酸化ストレス防御に重要なFOXOファミリータンパク質の活性を抑制します※6。このFOXOはCRなどの飢餓ストレス時に活性化されることが明らかになっており、栄養過多状態で活性化するInsulin/IGF-1経路は、その逆に働くことはもっともな反応といえます。

次にSIRT1経路ですが、長寿遺伝子として有名なサーチュイン遺伝子の経路となります。8.炎症とグネチンC ④炎症性腸疾患の抑制効果にも記載していますが、栄養不足(CR)状態になると代謝のマスターレギュレーターであるAMPKが活性化し、NAD+量が増加してSIRT1経路が活性化されます。SIRT1の発現上昇は、酸化ストレス抑制酵素SODの活性化、PGC-1α活性化による脂肪酸酸化の促進、ミトコンドリア機能の促進、FOXO1を介したDNA修復能の活性化、オートファジーの活性化などが関与しています※6。

ジャワしょうがによるオートファジー活性化効果

最後にmTOR経路ですが、これはタンパク質合成、脂質合成、脂肪細胞分化、糖代謝、オートファジーなどを制御しています。mTORにはmTORC1とmTORC2の2つの複合体が存在しており、栄養不足状態で活性化するAMPKによりmTORC1活性が抑制されます。mTORC1活性はオートファジーの抑制を通して損傷タンパク質の蓄積が進み発がんリスクを増加させるので、mTORC1抑制は寿命の延長、抗老化効果を発揮します※6。

なお、これらのCRと同様の効果を示す候補成分として、赤ワインに含まれるポリフェノールの1種「レスベラトロール」、免疫抑制剤の「ラパマイシン」、糖尿病薬である「メトホルミン」、納豆やチーズ、ヨーグルトなどの発酵食品に含まれる「スペルミジン」などが注目されています※6。

ジャワしょうがは炎症を抑制し、AMPKおよびオートファジーを活性化させて、mTORを抑制します。

ジャワしょうがの収穫風景③ Lembangにて

※1 基礎老化研究 44, (3) 31-39 (2020)
※2 Exp. Cell Res. 25, 585-621 (1961)
※3 Nature 550, 448-450 (2017)
※4 Cell 153, (6) 1194-1217 (2013)
※5 Cell 186, (2) 243-278 (2023)
※6 オレオサイエンス 18, (2) 55-60 (2018)

作成日:2025年6月30日