4.抗菌効果とグネチンC ②メリンジョに抗菌効果を発見 それでも、メリンジョにはなかなか巡り合いませんでした。東南アジアを何か国か回り気力も尽きようとしていた時、最後にもう一度インドネシアで探索してみようということになり、海を渡りました。1回目のインドネシア訪問ではバリ島とスラウェシ島で多種多様な植物を収集したのですが、2回目の訪問ではジャカルタを拠点としてジャワ島、スマトラ島、カリマンタン島で同様に収集しました。この2回目の訪問は1ヵ月におよぶ長期滞在となり、ジャワ島の中でもジャカルタ、ボゴール、バンドン、ソロ、スラバヤとジャワ島西部からスタートして東部に向かって列車で各地の都市を訪れて収集していきました。その2回目のインドネシアでの探索で、市場でふと目に付いた赤い実が気になり、「あの赤い実は何という植物だ?」と尋ねた時にはじめて、「メリンジョ」という言葉を聞きました。 早速ホテルに戻りメリンジョの抽出液を作って試験をしたところ、菌の増殖を抑制する効果を見せたのでした。実はこのメリンジョ、その市場ではじめて聞いた名前でしたが、実際にはその前から何度も食べていた素材だったのです。ウンピン(emping)というチップスの形で、ナシゴレンなどに添えられていました。気が付かないうちに、レストランで食べていたのは間違いなく、灯台下暗しとはよくいったものです。改めて見てみると、メニュー表にもmelinjo(メリンジョ)と書かれていました。 レストランで出てきたナシゴレンのウンピン添え なお抗菌試験に用いた菌は、枯草菌(グラム陽性菌で耐熱性もあり食品の品質低下の代表として納豆菌を選択)、大腸菌(グラム陰性菌の代表として)、酒精酵母(酵母の代表として)、アオカビ(カビの代表として)の4種になります。播種後室温で3日間静置して菌のコロニーの様子を観察しました。実はスパイスは抗菌効果を持つものが多かったのですが香りが強いものが多く、食品に添加することを考えるとその香りが邪魔になると考え、検討を進めるには至りませんでした。その点メリンジョは、抗菌作用が強いことに加えて色も香りもそれほど強くなく、非常に使い勝手のよい素材だったのです。昔からインドネシアで消費されてきたという食歴がある点も安心材料になりました。 市場で売られるスパイスなどの食品素材 << 前へ 次へ >> 作成日:2021年8月8日 更新日:2024年5月28日