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8.筋肉とバングレン

④バングレンによる疑似的な運動効果

バングレンによる疑似的な運動効果

骨格筋において生命維持のためのエネルギー産生に関わる酵素であるAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)は、細胞のエネルギー源となるアデノシン三リン酸(ATP)が減少し、アデノシン二リン酸(ADP)とアデノシン一リン酸(AMP)が増加すると活性化され、糖や脂肪などの合成を抑止し、糖の取り込みや脂肪酸のβ酸化を促進し、糖および脂肪代謝を高めてATPの産生を促進します※1。これは運動したことと同じ効果であるため、肥満、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病をターゲットとした様々な研究がされています。

ジャワしょうが由来成分であるバングレンには、骨格筋においてAMPKの活性化を促す効果があります。cis-バングレンを添加したマウス由来骨格筋細胞であるC2C12細胞は、cis-バングレンの濃度依存的にAMPKのリン酸化を促しました。つまり、cis-バングレンには骨格筋においてAMPKの活性を増加させる効果がありました※2。なおAMPKの活性化については、ジャワしょうがエキスを摂取した学習・記憶障害促進マウスであるSAMP8の腓腹筋(gastrocnemius muscle)でも同じ結果が得られています※3。

これらに加えて運動後に活性化される遺伝子群のmRNAの発現量を測定したところ、cis-バングレンはマウス由来骨格筋細胞であるC2C12細胞において核内受容体の一つで脂肪酸代謝に関与するPPARγ、脂肪酸のβ酸化促進やミトコンドリア生合成を促進させるPGC-1α、LPL、CD36およびミトコンドリアの熱産生調節を担うUCP3のmRNAを増加させました※2。

運動することにより骨格筋中のミトコンドリア量が増加することが知られています。その際、ミトコンドリアの数のみでなく大きさや質量の変化も起こります。cis-バングレンはミトコンドリア合成に関与する遺伝子である転写因子Nrf2とTfamを活性化させ、ミトコンドリア分裂因子であるFis1とDrp1には影響がなく、骨格筋においてミトコンドリア量を増加させ、コピー数も増加させました※2。

ミトコンドリアは細胞内に存在する器官であり、核とは別のDNA(mtDNA)を持っています。主な役割として、グルコースおよび脂肪酸を原料としたエネルギー産生があります。グルコースはピルビン酸を経て、脂肪酸はβ酸化してともにアセチルCoAに変換され、TCAサイクルおよび電子伝達系により筋肉の収縮などの生命活動に利用されるエネルギー源であるATPの産生が行われます。

ミトコンドリアによるATP産生イメージ図 8.筋肉とバングレン

また同時に、蓄えたエネルギーを熱として外部に放出するUCPというタンパク質を経由する機能も有します。この熱産生は、哺乳類の褐色脂肪組織(Brown adipose tissue:BAT)で起こる非ふるえ熱産生と呼ばれ、寒冷環境下での体温維持や冬眠覚醒時の急激な体温上昇のために必要な機能としても知られています※4。

骨格筋におけるミトコンドリア量の増加は運動持続時間の延長にもつながります。逆にミトコンドリア量の減少は骨格筋萎縮の原因となります※5。運動とグルコース代謝に関する臨床試験では、骨格筋はグルコースの85%以上も取り込んで代謝するという報告もあり※6、骨格筋におけるミトコンドリア量の増加は、糖・脂肪代謝の増加や熱産生による基礎代謝の増加など運動と似た効果が得られる可能性があります。

※1 YAKUGAKU ZASSHI 138, 1291-1296 (2018)
※2 Journal of Functional Foods 64, 103632 (2020)
※3 Journal of Food and Nutrition Research 9, 8, 434-441 (2021)
※4 化学と生物 37, 8, 514-520 (1999)
※5 Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 303, E31–E39, (2012)
※6 J. Clin. Invest. 68, 1468–1474 (1981)

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作成日:2021年9月8日